11月18日

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

 

ネイルOK、髪型OK、お化粧ばっちり。服装はお気に入りのワンピース。よし、自分完璧。

 

今日は二人の男と会う。

 

いつからか、ずっと楽しみにしてた。二人とも、二年前からよく知ってる人。パパと小島お兄ちゃん。パパは、730日間毎日かまってくれた。彼氏の話、ゲームの話。仕事の話。友達の話。共通の仲間の話。毎日電話。わたしが、一番会いたかった人。二年もあれば、わたしの泣いた顔、怒った顔、楽しい顔。全部知ってくれてる。仲の良いお友達っていうより、ここまでくるともう、本当のお父さんみたいな存在。だから付き合いたいとかは思ったことないし、寧ろパパと付き合うとか死んでも嫌だった。たとえ小さな事でも、わたしはいつもパパに頼る。いつも甘やかしてくれるパパは、本当に大好きな存在。そんなパパに会いたい会いたい言っても、パパは絶対にわたしと会ってはくれなかった。どうしてだろう。パパはわたしと会いたくないのかな。普通女の方が会いたい会いたい言ったら男が断るわけないじゃん!わたしの誘いを断るって、どうなのよ。会えないと言われたら、会いたくなるのが人間の心理。パパは社長さん。コロナがひどく、お店の売り上げも相当下がっているのだろう。別に、パパのお金が目的なわけじゃないのに…。そんな中、小島お兄ちゃんと毎日連絡を取っていて、今度遊ぶ話になった。この人は、何回も何回も喧嘩して、言い合いになって、連絡が途絶える時期もあったけどどれだけ喧嘩してもお互いがアイツ元気かなって思い合う目には見えない絆がある人。でも、端っからパパに内緒で小島お兄ちゃんに会いに行こうとは思わなかった。そこでわたしはひらめいた。小悪魔チックにひらめいた。

 

「小島お兄ちゃんに会いに行くからついでにパパんち行っていい?」

 

パパは目が点になった。必死でパパが言い訳を考えてる間、押せ。押せ。押して押して押しまくれ。

 

「交通費もったいないって言ってたじゃん?一日に二人と会えばいいってことだよね?にっこり」

 

パパは見事にわたしの話術に引っかかった。

めんどくさい性格の人を折れさせるのってすっごく気分がいい。

 

 

話は今に至る。

 

ただいま大阪駅。乗り換え中。

自信満々に会いに行っていい?とか言っちゃったけどどうしようどうしよう今更緊張してきちゃったよ!やっぱり帰ろうかな…でもここまで来ちゃったわけだし、もう引き下がれないよ。

 

待ち合わせ場所に着いた。

 

電話したらパパが車で迎えに来てくれた。

 

初めて見るパパの顔は……エドシーラン、じゃなくてサングラスで顔がよく見えません!でも、パパがサングラスをしてくれたおかげで緊張しないで済んだ。

髪型は外ハネ。シャツのボタン全開き。かっこいい…どうしよう、誰この人。エドシーランじゃないけどかっこいい。顔わかんないけどかっこいい。パパは電話と同じだった。

デートじゃないけど、楽しかった。ずっとしてほしかった抱っこも頭なでなでも、全部してくれた。嬉しくて嬉しくて、なんだか変な感じだったけど、終始ドキドキしてた。このドキドキはなんなのか。分からないけど、この後小島お兄ちゃんに会いにいくのが嫌だった。もっとパパと話したいと思った。

 

わたしの好きな人は、一ヶ月前に別れた雨天くん。パパも小島お兄ちゃんもみんな知ってる。別れてもまだ復縁を望んでるほど引きずってる。

本気になれば本気になるほど、忘れるのに時間がかかる。一ヶ月やそこらへんじゃ忘れられない。もし彼が居たら、今わたしは間違いなく大阪に足を運んでいないだろう。

 

小島お兄ちゃんとの待ち合わせ場所までパパについてきてもらうことにした。正直パパには帰らないでほしかった。ずっとそばにいてほしかった。

 

小島お兄ちゃんとごはん食べてるとき、頭の中はパパのことばかり。雨天くんの話もされたけど、今はごはんに集中できない。小島お兄ちゃんは、好きじゃなくてもとりあえず付き合ってみるタイプ。別にその考えが悪いことだとは思わない。実際付き合ってみないと分からない事って沢山あると思うし。どれが正解なのかなんて、誰にも分からない。

 

帰り際、小島お兄ちゃんの顔が近付いてきた。

 

 

バシッ

 

 

やめてよ…チューは雨天くんしか考えらんないんだから。

 

でも、これがもしパパだったら?

 

わたし、パパだったらどうしてた?

 

…逃げなかった?

 

 

さっきの待ち合わせ場所までパパが迎えにきてくれた。

 

ああ、やっぱりステキ。わたしのことをさらいにきてくれた王子様に見えた。

 

小島お兄ちゃんも一緒に乗ってきた。

なんで乗ってくるのよ。一人で帰ればいいじゃない。

 

車の中で、パパと手を繋ぎたかった。小島お兄ちゃんがいるけど、手を繋ぎたかった。いろいろ話を聞いてほしかった。

 

パパにライターを返すとき、パパの手をなぞるようにゆっくりとライターを押し付けた。

 

少し触れただけなのに、ドキドキする。このドキドキはなんなのか。ずっと会いたかった人に、やっと今日会えたから?好きな人は雨天くんなのに、これは一時の気の迷い?わたしって悪い女?もう全てが分からない。こんなドキドキ、久しぶりすぎて覚えてないよ。

 

 

けど、一つだけ言える。

 

 

パパのことは、絶対に好きになっちゃいけない。

 

 

好きになってしまったら、もう終わり。

なんのための二年間だった?悲しいとき、誰が慰めてくれる?誰が親身になって話を聞いてくれる?夜眠れないとき、誰がそばに居てくれる?

 

全てが終わる。

 

ずっと積み上げてきたものが、一瞬で崩れ落ちる。

 

わたしは、この関係がずっと心地良かった。

 

心地良いから甘えちゃう。

 

わたしの知ってるパパがもう居なくなるなんて、考えたくもない。

 

パパなしでは生きていけないの。

 

好きって何?好きってどういう感情?

 

恋なのか。愛なのか。もう分からない。

 

好きになっちゃいけない。そう思えば思うほど、感情が出てきそうで怖い。

 

不安になればなるほど、自分を見失っちゃう気がして…

 

その日の夜は全然、眠れなかった。

 

 

ーーーーーーーー必死に悩んだあの日。

今でも忘れられません。恋愛の教科書がほしいです。

小島お兄ちゃんとは今はもう会ってません。

パパとは恋人関係になりましたが、落ち着くまで時間がかかりました。

 

皆様、お読みいただきありがとうございました。